象をテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

ジンタ裏でだ 象番老人 あっ!耳がない  三樹彦

神戸に木下サーカスが来た折の探訪句で、山口誓子も「天狼」の探訪で来ていて、出くわしたのだと、自解文の中でこの句のエピソードが、書かれている。
サーカスは華やかだが、その舞台裏は忙しく立ち働く若者の活気とは、別に嘗てサーカスの花形だった人達が、怪我したり、老いたりして、下働きで暮らしているのを見ると、うら悲しい気分になる。このモデルの老人も猛獣にでも耳を噛みちぎられたのであろうか?ジンタの音が、またその字空け表現がその風景を際立たせている。
この句は伊丹三樹彦全句集より引いた。(昭和四二年の作)

秋日和象はしわしわそしてべちゃ  健治

先ごろ句集「大頭」を送って頂いた。大頭という句集名もクスっと笑わせるが、中身もかなりの言葉のこだわりで、綴られている。また、言葉だけではなく、「文旦」とか、「魚」とかの物にもかなりの執着を持っているらしく、重ねて同じ題材で作られている。掲句は、擬音(オノマトペ)を多用して、秋日の中に崩れる(座り込む)象の存在感をユーモラスでちょっとずらした感覚で描き出している。この句は句集「大頭」(青磁社)より引いた、南村健治の句。

芒原夜を羽ばたく象の耳  恵美子

象にはアフリカ象とインド象とマルミミ象の三種に大別されるが、この句の場合はアフリカのサバンナに住む、耳は三角形で最も大きいアフリカ象がモデルであろう。アフリカ象はインド象のように横になって眠らず、夜は立ったまま眠る。時折、その耳をばさばさ羽ばたかせるのは、夜の恐怖感を振り払っているのかもしれない。人間もまた、原始に持っていた五感が鈍くなったが、夜に対する恐れは未だに持っている。
この句は、句集「ポケット」(蝸牛社)より引いた小枝恵美子の句。

 

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