動物をテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

猫じゃらし だんだん動物くさくなる 逸子

猫じゃらしは狗尾草(えのころぐさ)の別名。イネ科の一年草で、その花穂が子犬の尻尾に似ているので、えのころ即ち犬ころから名付けられたと、言われている。何故だか、その愛らしい花穂に、ついつい遊び心をかき立てられる。作者も猫じゃらしを持って花穂を揺らしているうちに、いつの間にか自分自身が、猫にでも変身して遊びに興じているのだろう。動物くさくなると表現されたところに、明るく弾む心持ちが感じられる。この句は「青玄合同句集11」から引いた青玄無鑑査同人北川逸子の句。他に、「コスモス原 耳たぶ軽く泳がせて」など若々しい句がある。

月光に声うばはれて白い猫 佐弓

猫は古来エジプトでは、神として崇められるぐらいどこか神秘的な面を持っている。我が家でも、捨て猫だった三匹の猫をかれこれ、もう十年ぐらい飼っている。三匹には、ちょっと気恥ずかしいような名前をつけたせいか、名付け親の私に反応しない。そんな気まぐれ者だが、月を眺めるのは好きらしく、バルコニーで揃って月を見上げている。作者もきっと猫好きで、満月光を浴びて人の世界をひと時、離脱したのだろう。この句は鎌倉佐弓の句集「水の十字架」より引いた。

豚の目にあをあきかぜをみし日かな 柳二

豚は他の家畜に比べて進化の度合いが低く、未だにイノシシとの交雑ができる。その体形はころころして、ユーモラスであるが、そう言えばその目をしげしげと眺めたことがない。慌てて図鑑を引っ張り出して眺めて見ると、体つきとは対照的に、顔の奥まった所に、小さくつぶらに輝いている。柳二もきっと、豚の目をじっと覗き込んで、秋風を感じ取ったのであろう。秋は白秋と言われるように白のイメージだが、青秋風を捉えたことで一層、豚の澄んだ瞳がクローズアップ見えてくる。この句は句集「鈍足神追走記」より引いた、今坂柳二の句。

 

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