花をテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

地球の頬くすぐっている 花吹雪  珠子

青玄無鑑査同人の湯山珠子の句。1974年「青玄新人賞」、1987年「青玄賞」1989年「青玄評論賞」の三賞受賞作家。作者は人柄そのままに、肩肘を張らない平易な表現で、きっぱりと言いとめる俳句が特徴である。掲句も地球という大きな題材を俳句に持ち込むと、重く説教じみたものになりがちだが、「くすぐっている」という、極めてくだけた言葉でそれを受け止めて、軽いタッチに仕立てあげることにより、メルヘンチックな雰囲気を醸し出している。“フランス映画の話などして“葡萄にキス”なんて洒落た句もある。

花吹雪 のろしの上がる胸の内  啓造

句集「言葉の鳥」(平成7年刊)より掲出した鈴木啓造氏の句。
1996年「青玄評論賞」を受けるなど、文才に優れ、時代を先取りするネット句会を立ち上げ、その席主(管理者)を努めるなど、マルチな活躍ぶりである。のろしと言えば、すぐに西部劇でのインデアンが崖の上から合図を送る姿を思い浮かべてしまうが、それはともかく、のろしは原始的な伝達手段である。花時は、とかく焦燥感に襲われる。ぽっかりと開いた心の穴から、のろしの煙が立ち上る。きっと、遠くにいる誰かに、何か伝えたいことがあるように・・・・。青春性の高い、感覚的な俳句である。

桜咲くそうだヤカンを買いに行こ  幸子

句集「遠くの山」(平成12年刊)より掲出した中原幸子氏の句。
坪内稔典氏が句集の跋文で、作者の事を何事にもひたむきであり、その一途さが妙に可笑しさを覚えると表されているが、それが本人は意識されていないのだろうが、見事に(?)俳句に滲み出ている。掲句も、桜が咲いたら普通は、さあ見物に出かけようと思うのだが、なんとヤカンを買いに行くとは。見事に読者の予想に反した行動に出て、微笑ましくて笑ってしまう。作者は話し言葉を取り入れた、いい句が多い。

 

コメントを残す