魚をテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな 兜太

鯉の原産地は中央アジアといわれ、古くから人に飼われて、その色彩や斑紋の美しさから今では、広く世界の温暖地方に分布している。大きさも普通は60センチ程度だが1メートルを超えるものもあり、水温が20度以上あると群れをなして泳ぎ回る。兜太はこの鯉の生態を感覚的に、夜の歓喜と表した。その情景は極めてエロチックで生命感の溢れる幻想的な世界を構築している。兜太が唱えた《対象と自己の間に、「
「作る自分」を主体として定着させた》いわゆる、俳句の造型論の中で試みられた、句として捉えたら、いいのかもしれない。「谷音に水根匂いの張る乳房」などもある句集「暗緑地誌」の中から引いた金子兜太の句。

金魚は魚でしょうか はなびらと思うのに 公子

金魚は、フナの変種。わが国へ中国から移植されたのは、1502年(文亀二)で、江戸時代には盛んに各種の金魚が飼われるようになった。特に、四代将軍家綱の頃は金魚屋が出来たほどで、鳥居清長の錦絵にも描かれている。掲句に詠まれている金魚は当初に伝えられたと言われる和金ではなく、「リュウキン」であろう。リュウキンは、ひれは各ひれとも長く、しりびれは二葉、尾びれは三つ尾、四つ尾が普通。その姿は優美で、花びらを思わせる。公子の「金魚は魚でしょうか」と問いかける平易な口語表現が、「はなびらと思うのに」の比喩の面白さを一層引き立てている。この句は、句集「伊丹公子」(花神社)から引いた。

ふつつかな魚のまちがひそらを泳ぎ 白泉

この間、岩満重孝著の百魚歳時記(中公文庫)を買った。著者が画家だということもあり、春の魚32種、夏の魚51種、秋の魚21種、冬の魚26種、合計130種の魚がスケッチ入りで載っている。ぱらぱらと本のページを繰りながら、掲句のふつつかな魚を探す楽しい時間が持てた。トビウオなんかは、当たり前すぎて面白くもない。どこかとぼけているニベがいい。「ニベは、産卵期の夏になると、雌雄まるで申し合わせたかのように鳴き出すのだ。それは、大集団で鳴き出すのだから、異様なものである。(後略)」などの、エピソードが同書に書かれている。ニベが空を鳴きながら飛んでいる姿を想像したら、楽しくなってきた。この句は「白泉句集」から引いた渡辺白泉の句。

 

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