オノマトペをテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

撫で牛の鼻ぴっかぴか 梅ひらく  三樹彦

「青玄」565号(3月号)より掲出した伊丹三樹彦氏の句。
神社に行けば、様々な縁起物がある。社殿の前に置かれている牛の座像もそのひとつ。
首に涎掛けなど付けられていて、なんともユーモラスだ。
この撫で牛の 信仰は菅原道真が丑年の日に誕生され、その遺言に「自分の遺骸を牛の背に乗せて人にひかせず、その牛の行くところにとどめよ」とあり、牛は安楽寺四堂のほとりで動かなくなり、そこを墓所と定めたとあり、1100年にそのルーツはあったようです。
時を経て、その撫で牛の口のあたりを撫ぜると、食い物には困らない等という謂れがあるらしい。
ぴっかぴかというオノマトペが、庶民の願いを象徴しているようだ。
 

ふわふわの闇ふくろうのすわる闇  稔典

句集「月光の音」より掲出した坪内稔典氏の句。
ふくろうは、ギリシャ神話などでは、英知や霊力のある鳥として扱われているが、日本では最近、ふくろうを福と掛けて、幸運を呼ぶ鳥として、様々なグッツが作られたりしている。
それは、ふくろうの愛らしい目やその姿が万人に愛されている鳥だからだろう。ともあれ、掲句は闇という漢字以外、一切はひらがな表記し、更に闇をリフレインして使っている。
そのことにより、闇そのものを一層クローズアップさせている。 ふわふわの闇という表現も、その闇が心地良く、かつ美しく感じられる。
 

なずな咲くてくてく歩くなずな咲く  恵美子

句集「ポケット」より掲出した小枝恵美子氏の句。
いつも春になると、この句が口をついて出る、私の愛称句。
野歩きに、ついつい出歩きたくなってしまう。本来、俳句中に、動詞を二つ使ってはいけないとされている禁をあえて破り、「咲く」「歩く」と重ねているが、てくてくを句の真ん中に据えて、
リズミカルな俳句にしている。空の青さまで見えてくるから不思議。