地球をテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

マリが住む地球に原爆などあるな 白泉

白泉は西東三鬼ら親しく付き合い「京大俳句」に会員に推された。だが、昭和十五年に当時の治安維持法にひっかけられ、平畑静塔以下主要会員の一次検挙に続いて白泉も第二次検挙された。当時の句に「三宅坂黄套わが背より降車」(黄套は将校のカーキ色の外套)、「戦争が廊下の奥にたつてゐた」などがある。そんな戦争への陰湿な思いを払拭したい思いで、この句は作られたのだろう。句は“わが敬愛する人の長女十二歳誕生日”と前書きをつけた三句の中の一句。決してこの地球に原爆などと言う破壊兵器は存在してはならないと、訴えている。この句は、渡辺白泉の句集「夜の風鈴」より引いた。

寝転べば地球の吐息 草いきれ まゆみ

草いきれは夏草がむせるような匂いと湿気を発することを言うが、作例は江戸時代にいくつかあるが、歳時記には挙げられていない。子規の『「分類俳句全集』に草いきりの項に「草いきれ人死をると札の立て」(蕪村)ほか五句挙げられている。この季題の本意は、蕪村の句によって定まって、近代多用されるようになった。さて、この句は草叢に寝そべって、むせ返るような夏草の生命力を地球の吐息と感じ取った。草いきれは草の息ともいう。人が生きているという実感を強く意識させる句。この句は「青玄合同句集11」より引いた、高石まゆみの句。

地球儀ひとまわし パスタを茹でている  節子

地球儀は大航海時代に1606年ブラウ(オランダ製)など他、多く作られるようになったが、その頃は日本は地球儀上には当然存在していなかった。宣教師が盛んに訪れるようになり、16世紀末にほぼ現在の位置に書かれた。現在販売されている地球儀は多くは五万分の一である。とすれば富士山はたった0.06ミリ、成層圏までの距離は0.2~1ミリということになることを思えば面白い。さて、節子は地球儀をひと回しして、止まった所がイタリアだったのだろうか?そうだ、今日のメニューはパスタにしよう。そんな風に想像したら、面白い。ちょっとオシャレな句だ。この句は「青玄合同句集11」より引いた、高田節子の句。

 

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