どんな落ち方だったか 消えた木守柿 光延
我が家にも一本柿の木がある。毎年沢山の実がなるが、渋柿なので取った後、吊るし柿にするのが恒例になっている。あまり意味も解からず、天辺にひとつ柿を残していた。調べてみると、来年もよく実がつくようにというまじないだとも、あるいは小鳥の分を取ってあるのだとも言われている。これは、「木守り」即ち幸魂(さきみたま)信仰によるものらしい。その木守柿だが、どうなるだろうと気になって眺めているのだが、いつの間にか、無くなっている。きっと神様が天上へ持ち帰るのだろう。この句は、「青玄合同句集11」から引いた、無鑑査同人、蔭山光延の句。
柿のれん 家の真中あたたかい ちとせ
柿のれんは俳句独特の言葉である。因みに広辞苑を引いてみれば、①柿色の染めた暖簾②遊郭で、端女郎の局(つぼね)にかけた柿色染めの暖簾。その局。などと解説されている。俳句のそれは、沢山の吊るし柿を暖簾と見立てた趣のあるもの。掲句だが、柿のれんが見られるようなところは、農家の大きな家に違いない。モノクロの冬景色の中に、柿の明るさが際立って見えてくる。家の真中即ち、団欒の場所はあたたかい。柿の明るさと響きあっていて、気持ちよい句。この句は「青玄合同句集11」から引いた、無鑑査同人、梅岡ちとせの句。
噂話 指鉄砲で落ちる柿 紀代美
京福電鉄の永平寺~東古市間が、平成14年2月に配線になった。会津から永平寺まで電車が開通したのが、昭和4年12月だったと言う。この、永平寺線を30数年、写真に撮り続けた人がいる。その写真集が、先日送られてきた。写真に仲良く夫婦で俳句を添えている。掲句は、その中の一句。噂話というものは、たわいのないもの。そんな噂なんて、柿と一緒に指鉄砲で消し飛ばしてやろうと、思っているのだろう。明るい風景の見える句。この句は「京福電鉄01/08/09」から引いた青玄同人、中村紀代美の句。(写真は中村継夫が撮影)
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