星をテーマにした俳句(厳選三句)

sanku

声澄みて北斗にひびく砧かな 芭蕉

冬空は空気が澄んで、星がひときわ美しく見える。最近、寒いが十時過ぎ、ベランダに出て星をよく見る。特に冬の王者と言われるオリオン座は、南空に雄大に輝いている。(オリオン座は、一等星二つ、二等星五つ)芭蕉の見た北斗七星は、北の空に見える。いまは、町の明かりが強すぎる上、空気も汚れたので七星のすべてが見えない。芭蕉の見た北斗七星は、どれほど美しかったであったろうかと、夜空を仰げば想像力を掻き立てられる。今は見ることの無くなった砧の音が星と響きあう光景を詠んだ芭蕉はロマンチストだったのだ。この句は、元禄三年の句集「都曲」から引いた松雄芭蕉の句。

雨雲の梅を星とも昼ながら 鬼貫

野尻抱影の著書「星の三百六十五夜」に梅花と星ついて、このように書いている。友人の茶室に一休筆の一行物「梅花明似星」が掛っていた。主客ともこれを「明、星に似たり」と読んであやしまなかった。(中略)その後私は、これは「星より明らかなり」と読むので、一休は菅公の句を踏まえて、こうひねったらしいことを知った。そして、梅の花の白点々を星にたとえるのは自然だ、と述べている。従って、掲句もどんよりした雨雲の中に鮮やかに色を放つ梅を、星と見立てたのであろう。この句は鬼貫の句集「独言」より引いた。なお、野尻抱影は冥王星の命名者で知られ、山口誓子と合作で「星恋」(昭和21年)の名著を出している。

牡牛座が目印ペルー料理店 硝子

牡牛座もまた、冬の代表的な星座。神話によれば、フェ二キアの王女エウロぺを見初めた大神ゼウスは、雪のような真っ白な牛になって近づき、王女を背中に乗せるとクレタ島に行きました。それからこの地を王女の名にちなみ、ヨーロッパと呼ぶようになったといいます。そんな神話を知らずとも、牡牛座が目印の料理店なら、ぜひとも行って見たいし、ペルー料理がとても美味しそうに思えて、食べてみたくなった。この句は、「船団53号」より引いた、児玉硝子の句。

 

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