秋の句4・俳句百景(富澤秀雄句集)

autumn

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076 丸木橋渡れば茸の顔になる
077 馬の背に止まって錆びる秋の蝶
078 月光を泳げば母の匂いして
079 船底のカーブゆるやか秋の雨
080 カステラ切る地質学者の貌をして
081 虫の闇 体温計がピピッと鳴く
082 秋空の雲の学校 チャイム鳴る
083 曼珠沙華 列車の窓がコマ送り
084 どんぐり独楽 笑い転げてから止まる
085 アルカイックスマイル 石榴が割れている
086 シューベルトの未完の楽章 ちちろ虫
087 蓑虫の振り子 故郷遠くなる
088 オリオン星あれは天使の覗き穴
089 群泳のイワシ 積み木の音がして
090 新月の夜しか出ない船がある
091 月光の海なら 潜望鏡深度まで
092 穴惑いボルトに合わないボルト穴
093 朧月 指にくっつくオブラート
094 林檎剥く 人差し指から老いてゆく
095 赤ん坊の指は 銀河の匂いして
096 メンソレータムうっすら塗って 月涼し
097 虫の夜まだ起きている 置き眼鏡
098 天高し UFOキャッチャから ポロッ
099 稲光 ノイズ混じりの「Let it be」
100 調律のハンマー叩けば鱗雲

 

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